ゾウリムシは、小型魚の針子・稚魚の成長をサポートする最適なエサです。
培養も簡単で、増やし方のポイントを覚えれば安定して増やすことができます。
この記事では、ゾウリムシの増やし方やエサの種類・特徴を詳しく解説し、成功のポイントやよくある失敗例もご紹介します。
ゾウリムシの培養をマスターして、大切な針子や稚魚が元気に育つ環境を整えましょう。
ゾウリムシは針子や稚魚のエサに最適

ゾウリムシは、バクテリアを食べる原生生物で小型魚の針子・稚魚、エビの幼生、微生物などのエサとして最適です。
針子や稚魚はエサをうまく食べられずに餓死してしまうことがありますが、ゾウリムシはサイズが非常に小さく食べやすいため、餓死防止に役立ちます。また、嗜好性が高く稚魚が好んで食べるエサでもあります。
さらに、ゾウリムシは水を汚しにくいため、多少与えすぎても水質が悪化しにくいのもメリットです。
針子や稚魚がいつでもエサを食べられる環境を整えられるため、餓死を防止し生存率向上に役立ちます。
稚魚の成長をさらに促したい場合は、ゾウリムシとあわせて栄養価の高い稚魚用のエサやクロレラなどを主食として与えるのがおすすめです。
ゾウリムシは、主に以下の生き物の初期エサに向いています。
- メダカ・金魚・熱帯魚の針子や稚魚
- えび・シュリンプの幼生
- 水生爬虫類・両生類の幼体
- ミジンコ・ワムシなどの微生物

和香の公式YouTubeでもゾウリムシについてわかりやすく解説をしています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。
ゾウリムシの増やし方
ゾウリムシの増やし方を3ステップで解説します。
準備するもの
- ペットボトル(2L)※丸くてくぼみが少ないものを推奨
- カルキ抜きした水(1L)
- ゾウリムシの種水(500ml)
- ゾウリムシのエサ(エビオス錠やドライイースト、ゾウリムシ専用餌など)
- ロート(推奨)
【手順1】容器にゾウリムシと水を入れる
ペットボトル(2L)にカルキ抜きした水を1L投入し、ゾウリムシの種水500mlを投入します。上部に少し空間ができる程度が目安です。
※500mlのペットボトルで培養する場合は、2:1の割合にこだわらず水:ゾウリムシ=1:1 (200mlずつ)で培養するのがおすすめです。
【手順2】エサを投入し攪拌する
エサを投入し、フタを閉めて攪拌(シャッフル)したら、空気が入る程度の隙間をあけてフタをのせておきます。
※推奨:このタイミングでPSBを水の色が若干ピンク色になる程度入れると培養速度が上がります。
1日1回は攪拌し、3〜5日に1回の間隔で1回目と同じ量のエサを投入します。
【手順3】株分けやリセットをする
エサの種類や培養環境によって日数は異なりますが、5日〜1週間ほど経過すると、ゾウリムシが肉眼でも見えるほど増え、この状態から数日で飽和状態になります。
飽和状態が続くと個体数が減少するため、飽和状態になったら株分けやリセットを行い密度を薄めます。
株分け方法
飽和状態になったペットボトルのゾウリムシを飼育水ごと3分の1ずつ3本に分けて、ぞれぞれにカルキ抜きした水を入れます。
株分け後は、上記2〜3の手順で培養します。
株分けが必要ない場合
株分けするほど量が必要ない場合は、使用して減った分だけカルキ抜きした水を継ぎ足して上記2〜3の手順で培養します。
ただし、容器は10日〜2週間程度で交換するか、洗浄してぬめりを取り除いてから使用しましょう。
エサの種類と特徴
ゾウリムシのエサの種類は豊富にあり、米のとぎ汁やお茶など身近なものをエサにすることもできます。
エサの種類によって、培養のスピードや水質への影響、臭いの強さなどが異なります。
ここでは、ゾウリムシのエサの種類と特徴を解説します。
それぞれのエサの特徴を理解して、自分の目的や用途に合うエサを選択しましょう。
なお、使用量につきましては、実際は飼育環境やゾウリムシの種水の増殖濃度によっても変わってきます。あくまで目安量となりますので予めご承知おきください。

ゾウリムシ専用のエサ
特徴
初心者の方には、ゾウリムシ専用のエサがおすすめです。
専用エサはゾウリムシの増殖に特化した配合になっており、スムーズに増やしやすいのが特徴です。
また、培養方法や分量が記載された説明書付きの商品を選べば失敗しにくく、より安心して培養を始められます。
ゾウリムシの種水の用意が必要な場合は、種水と専用エサがセットになっているものがおすすめです。
使用量の目安
※和香特製ゾウリムシ用培養粉餌の場合
容量 | 水 | ゾウリムシの種水 | 和香特製ゾウリムシ用培養粉餌 | 合計 |
---|---|---|---|---|
500ml容器 | 200ml | 200ml | 0.1g | 400ml |
2L容器 | 1L | 500ml | 0.4g 付属のマドラーですり切り2杯程度 | 1.5L |
※100ml分(500ml容器)/500ml分(2L容器)が空気になるようにする

PSB(光合成細菌)
特徴
PSB(光合成細菌)とは、太陽の光を利用して有機物や無機物を分解する微生物です。
PSBは、水中のアンモニアや硫化水素などを分解して水質を浄化し、PSB自体が動物性プランクトンや魚のエサになります。
PSBをエサにした場合、ゾウリムシの増殖スピードが速く、水質を浄化する働きがあるため、水質が悪化しにくいのが特徴です。
メダカ飼育などでPSBを使用している方は、ゾウリムシの培養にも活用するのがおすすめです。
メインのエサとして使用できますが、他のエサと組み合わせることで培養スピードをさらに向上させることも可能です。
使用量の目安
1Lに対して10ml程度添加(和香の特濃PSB光合成細菌の場合)※PSBの濃度によって使用量は異なります。
容量 | 水 | ゾウリムシの種水 | PSB | 合計 |
---|---|---|---|---|
500ml容器 | 200ml | 200ml | 5ml程度 | 400ml |
2L容器 | 1L | 500ml | 20ml程度 | 1.5L |
※100ml分(500ml容器)/500ml分(2L容器)が空気になるようにする

ドライイースト
特徴
ドライイーストはスーパーなどで手軽に手に入り、増殖スピードが速いのが特徴です。
大量培養したい方に適していますが、使用量をしっかり計量する必要があります。
また、水質が悪化しやすいため、株分けやリセットのタイミングには気を付けましょう。
使用量の目安
容量 | 水 | ゾウリムシの種水 | ドライイースト | 合計 |
---|---|---|---|---|
500ml容器 | 200ml | 200ml | 0.2~0.5g程度 | 400ml |
2L容器 | 1L | 500ml | 0.8~2g程度 | 1.5L |
※100ml分(500ml容器)/500ml分(2L容器)が空気になるようにする
観賞魚用のエサ(粉末を水に溶かしたもの)
特徴
粉末タイプの観賞魚用のエサを水に溶かして、ゾウリムシの培養に利用することもできます。
水に溶かして使用するため、培養に使うのはなるべく粒が細かいものがおすすめです。
使用量の目安
エサの種類によって異なる
豆乳
特徴
豆乳は、スーパーやコンビニで手軽に入手でき、ごく少量で培養できるコスパの良いエサです。
増殖スピードが速い一方で、水質が悪化しやすいため、エサの与えすぎに注意し、適切なタイミングで株分けやリセットを行うことが重要です。
また、なるべく添加物の少ない豆乳を選択しましょう。
使用量の目安
容量 | 水 | ゾウリムシの種水 | 豆乳 | 合計 |
---|---|---|---|---|
500ml容器 | 200ml | 200ml | 0.4~1ml程度 | 400ml |
2L容器 | 1L | 500ml | 1.6~4ml程度 | 1.5L |
※100ml分(500ml容器)/500ml分(2L容器)が空気になるようにする
クロレラ
特徴
クロレラは、観賞魚用品専門店やネット通販などで購入できます。
増殖スピードが速い一方で、水質が悪化しやすいため、適切なタイミングで株分けやリセットを行うことが重要です。
粉末クロレラを使う場合は、生クロレラより沈殿しやすいためエサの与えすぎや攪拌不足に注意しましょう。
使用量の目安
水が薄く緑色に染まる程度


グリーンウォーター
特徴
屋外飼育でグリーンウォーターがある方は、ゾウリムシのエサとして活用できます。
増殖スピードはゆっくりですが、他のエサに比べて臭いが抑えられるため、臭いが気になる方にも向いています。
使用量の目安
容量 | 水 (グリーンウォーター自体を水として使用) | ゾウリムシの種水 | グリーンウォーター | 合計 |
---|---|---|---|---|
500ml容器 | 0ml | 200ml | 200ml | 400ml |
2L容器 | 0ml | 500ml | 1L | 1.5L |
※100ml分(500ml容器)/500ml分(2L容器)が空気になるようにする
生茶
特徴
生茶を使った培養は他のエサに比べて臭いが抑えられるため、臭いが気になる方におすすめです。
また、スーパーやコンビニで手軽に入手できる点もメリットの一つです。
増殖スピードは緩やかですが、水質が悪化しにくいのが特徴です。
使用量の目安
500mlのペットボトルで培養する場合:100~200ml
2Lのペットボトルで培養する場合:400~800ml
容量 | 水 | ゾウリムシの種水 | 生茶 | 合計 |
---|---|---|---|---|
500ml容器 | 100ml | 200ml | 100ml | 400ml |
2L容器 | 600ml | 500ml | 400ml | 1.5L |
※100ml分(500ml容器)/500ml分(2L容器)が空気になるようにする
米のとぎ汁
特徴
毎日お米を炊く方は、米のとぎ汁を活用することでコストをかけずにゾウリムシを増やせます。
ただし、米のとぎ汁を使用した場合の増殖スピードは緩やかで水質が悪化しやすいため、適切なタイミングで株分けやリセットを行いましょう。
使用量の目安
500mlのペットボトルで培養する場合:米のとぎ汁50~100ml
2Lのペットボトルで培養する場合:米のとぎ汁200~400ml
容量 | 水 | ゾウリムシの種水 | 米のとぎ汁 | 合計 |
---|---|---|---|---|
500ml容器 | 150ml | 200ml | 50ml | 400ml |
2L容器 | 800ml | 500ml | 200ml | 1.5L |
※100ml分(500ml容器)/500ml分(2L容器)が空気になるようにする
エビオス錠
特徴
市販の胃腸・栄養補給薬の「エビオス錠」はビール酵母から作られており、ゾウリムシのエサとして活用できます。
増殖スピードが速いため、大量に培養したい方にはおすすめです。
また、常温保存が可能で錠剤タイプのため保管や計量の手間がかからないのもメリットです。
ただし、水質が悪化しやすいため、適切なタイミングで株分けやリセットを行いましょう。
※和香としてはエビオス錠(ビール酵母)での培養を推奨しておりません。200種以上いる光合成細菌のうち、観賞魚用に適した光合成細菌の配合を行っており、光合成細菌毎に必要とする栄養分が異なります。
エビオス錠やビール酵母でも育つ光合成細菌の組み合わせの場合は、培養がうまくいく場合がありますが、そうでない場合は培養が失敗することになります。
使用量の目安
500mlペットボトルで培養する場合:0.5~1粒程度
2Lペットボトルで培養する場合:2錠程度
成功のポイント
ゾウリムシを上手に増やすためのポイントを6つご紹介します。
温度を20~25℃に保つ
ゾウリムシの培養に適した温度は20〜25℃程度です。
低温でも生存はできますが細胞分裂ができないため次第に減少してしまいます。
また、35℃を超える高温で長時間放置すると死滅してしまうので、夏場の高温にも注意が必要です。
水質悪化に注意する
培養中の水は、水質が悪化していくので10日〜2週間を目安に交換しましょう。
また、ゾウリムシが増えすぎて飽和状態が続くと水質が悪化し培養がうまく進まなくなる場合があります。
定期的に株分けやリセットを行い水質の悪化を防ぎましょう。
ぬめり(バイオフィルム)を取る
容器のぬめり(バイオフィルム)がゾウリムシに絡まると分裂ができなくなってしまいます。
容器は、株分けやリセットの際に新しいものに交換するか、掃除をしてぬめりを除去してから使用しましょう。
四角い形やくぼみがあるペットボトルを使用すると、角やくぼみのぬめりにゾウリムシがつかまりやすいため、丸くてくぼみが少ないペットボトルの使用がおすすめです。
エサやりの頻度・量に気を付ける
ゾウリムシは、エサの消費が速いのでエサ不足に注意が必要です。
3〜5日に1回はエサやりをしましょう。
エサを与えすぎても水質が悪化するため、適量を与えることが大切です。
1日1回攪拌する
ゾウリムシの培養を成功させるには、1日1回の攪拌が重要です。
攪拌することで、以下の効果が期待できます。
- 刺激を与えることで細胞分裂が促進する
- 酸素を水中に浸透させ酸欠を防止する
- 水面のバイオフィルムをはがし、水中に酸素を届きやすくする
- 沈殿しているエサを水中に拡散しゾウリムシに行き渡らせる
直射日光が当たらない場所で培養する
ゾウリムシは直射日光に弱いため、直射日光が当たらない場所で培養しましょう。
完全に遮光する必要はありませんが、培養に日光は必要ないため紫外線が当たらない場所で培養するのがおすすめです。
直射日光を避けるべき理由として、以下の2点があります。
- 温度変化が起こりやすい環境を避けるため
- 空気中の植物性プランクトンが培養液中に混入することで、藻類が急激に増殖してしまい、ゾウリムシを純粋に培養できなくなる
藻類自体は魚やゾウリムシの餌にもなり得ますが、直射日光下の場合、藻類の繁殖が早くなりすぎてしまい、ゾウリムシよりも多く繁殖してしまう失敗に繋がります。
ゾウリムシ培養の失敗例
ゾウリムシ培養でよくある失敗例をご紹介します。
事前に失敗の原因を知ることで、培養の成功につなげましょう。
エサを与えすぎた
エサを与えすぎると、水質が悪化し培養が失敗しやすくなります。
ゾウリムシは、少量のエサで培養できます。
目分量で計りエサを多めに入れてしまったり、回数が多すぎたりすると培養が失敗してしまいがちです。
エサの量には気を付けましょう。
ペットボトルのフタを完全に閉めて培養した
臭いが気になったり、こぼれるのが心配になったりしてフタをしっかり閉めたくなる人も多いでしょう。
しかし、フタを完全に閉めてしまうと酸素不足になってしまう可能性があります。
フタは完全には閉めずに空気が入る隙間を空けておくことが大切です。
また、空気中の微生物の混入をできるだけ防ぐために、隙間を空けつつフタをかぶせておきましょう。
飽和状態になったまま飼育した
ゾウリムシが増えすぎて飽和状態になったまま培養を続けると、水質が悪化して培養がうまくいかなくなり、減少してしまう恐れがあります。
飽和状態になったら株分けかリセットを行いましょう。
小さくなり肉眼では見えなくなった
ゾウリムシが全滅したと思っても、実は細胞分裂によって小さくなり肉眼では見えにくくなっていることがあります。
ゾウリムシは細胞分裂を繰り返すたびに小さくなるため、タイミングによっては確認が難しくなります。
肉眼で見えない場合は、別の容器に移して数時間置くと水面の上部に集まるので、ライトを当てながら10倍程度のルーペで観察すると確認しやすいです。
また、培養液に浮遊する白い粒や沈殿物を死骸と勘違いすることがありますが、これは増殖の過程で生じる生成物やエサの一部です。
ゾウリムシがいるかどうか確かめるには、ルーペでの観察がおすすめです。
まとめ
ゾウリムシは、身近なものをエサに簡単に培養できます。
エサの種類によって培養のスピードや水質への影響、臭いの強さ、必要なコストが異なるため、自分の目的や用途に合うエサを使用しましょう。
失敗が不安な初心者の方には、ゾウリムシ専用のエサがおすすめです。
培養を成功させるには、水温や1日1回の攪拌、適切なタイミングでの株分けやリセットも重要です。
この記事を参考に、増やし方のコツを掴んで稚魚の育成に活かしてください。
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